ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「でもこんな高そうな指輪……渚、バイトとかしてたっけ?」


「あー……バイトはむぎとの時間とれなくなるからしたくなくて、代わりに親の仕事手伝ったりして」


「そうだったんだ……」


「昨日の、」


「え?」


「母さんたちがいてバタバタしてたし、とにかくむぎにふれたくてたまんなくて、余裕なくて言えなかったけど、俺もだよ」


「え?」


「昨日母さんたちに言ってくれたこと、嬉しかった」


「え、なに言ったっけ……?」


「忘れちゃった?あんなに熱烈な告白してくれたのに」


告白?


「なんて……っ、あ」



『渚のことは小さいときからずっと、今も、誰よりも好き、なので……渚を嫌うことは死んでもありえないです』

〜〜!!


「俺は一字一句覚えてるし、なんなら昨日寝る前も思い出してから寝たよ。もう一回言ってくれないかなー私は渚が、」


「あーあーあー!
もうはずかしいから忘れて!」


「やだ。貴重なむぎのデレ姿、もう俺の頭にしっかり記憶されてるから」


「っ〜〜もう、まだごはん食べ終わってないから!」


「ふはっ、はいはい。
アーンしてあげようか?」


「結構です!」


渚がこんな素敵な指輪を贈ってくれた分、私も渚になにかを返したい。


もちろん物でもいいけど、それよりも。


私が昨日言ったことを一字一句覚えてるなんて。


渚ならいつもそうかもしれないけど、本当はそれだけ私が素直になってくれたことが嬉しかったのかな、なんて。


私も渚みたいに。


渚に好きが伝わるように、もっと素直に。

好きって言えるようになれたらいいな。