ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



ふと、薬指に感じた少しの重み。


「ん。婚約指輪」


波のようにカーブを描いたシルバーのリング。

真ん中にはゴールドの星がついていて。


「このデザイン……」


「気づいた?」


「っ、うん……っ、」


私の大好きな星と、渚のクールなイメージの静かな波。

まるで、私たちふたりを象徴しているみたい。


「付き合った日に俺、プロポーズしただろ?」


「……うん」


「本当はあの日に渡そうと思ってたんだけど、タイミングがなくて、なかなか渡せなくて。でも……やっと、やっと、渡せた」


「なぎ、さ……」


窓から差し込む太陽の光に反射して、キラキラ輝く指輪。


まるで夜、静かな波が打ちつける海の上で輝く満点の星みたいで。


「っ……ありが、とう……」


好きな人からのプロポーズ、そして指輪。

これ以上にないくらい、嬉しくて、幸せで。


「ごめん、朝から泣かせて」

「っ、ん……」


頬に落ちた涙をすくうように、そっと頬をなでられて目元を優しく拭ってくれる。


「幸せ……」


「俺もだよ。受けとってもらえて、泣くくらい喜んでくれて、これ以上にほど幸せ」


そう言って私の手に重なった渚の手。

カツンと当たったそれは。


「ペアリング……?」


「うん。これでむぎと婚約してるって周りにも牽制できる。毎日、つけてくれる?」


「もちろんだよ……ありがとう。
大事に、する」


「ん。結婚指輪はまたちゃんと別で渡すから。
それまで待ってて」