ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***



「まずは一つ。俺のこと知ってくれてめちゃめちゃ嬉しい」


「えっと……まあ、うん」


どう反応するのが正解なのこれ……。


頬杖をついて、好きを隠さない甘さでほほえむ渚にしどろもどろ。


というか……。


「私、ダメ人間になりそう……」


「ダメ人間って?」


「だって……」


このフレンチトースト、おいしすぎるし……。


あれからリビングに行ったらできたてあつあつのフレンチトーストがあって。


聞けば起きてからコンビニで材料を買ってきたんだって。


「こんなにおいしいフレンチトースト作れるとか、渚天才……」


「べつに。
卵と牛乳とパンしか使ってないよ」


彼氏よりも朝起きるのが遅い上(起きたら昼)に、朝ごはん彼氏任せ。


汐さんが言ってた花嫁修業どころか、ただただだめでズボラな女になりそう……。


「朝一瞬起きたけど、すぐ寝ちゃったし、気持ちよさそうに寝てるとこ起こすのかわいそうだなって」


「え、朝起きた?」


「覚えてねーの?
あんなにかわいく笑っておはようって言ってくれたじゃん」


「かわいく!?」


「そう。こんな近い距離で、しかも俺の名前よんで、好きって言ってくれたの」


「ちょっ、ちか……って、ええっ!?」


「たぶん夢の中で、だけど。どんな夢見てたの?」


どんな夢って……ほとんど覚えてない。

うっすら起きたような記憶があるくらいで……。


「無意識かー。なら無意識でも俺のこと好きって思ってくれてるってことだよな……なに、すっげーかわいいんだけど」


グイグイ顔を近づけてくる渚を私も負けじと押し返す。