ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「はぁ……ほんっと、」


「なに……きゃあっ!?」


もうこれで朝から何度目!?

起きてまだ数分しか経ってないはずなのに、何回ハグしてるの私たち!?


「離れんな」


そ、そうは言ったって、苦し……っ!

どんだけ力込めてるの!


「おかしくなればいいじゃん」


「は?」


「もっともっとおかしくなって、後戻りできないくらい堕ちて俺のとこに来てくれれば」


「でも、なんか、怖い、」


「怖くなんか、ないよ。
ただ……」


「ただ?」


「お互いしか見えなくなるくらい、お互いのぜんぶが欲しくなるまでになるだけ」


「っ、なぎ、」


「めちゃめちゃに愛したいから」


「はっ!?」


「むぎと付き合った時点で、もう我慢しないって決めたから、あとはむぎが俺にめちゃめちゃ愛される覚悟をするだけ」


「っ!?」


「両思いだし、婚約してるし、特訓もプラスして俺はもういつでも暴走する準備は整ってるから」


「それに、俺に隠しごとしたらどうなるかも、身をもって教えないとな?」


「……」


まぶしい。

まぶしすぎる。


ここまでにっこり笑った渚、見たことない。


ずっと隣にいたのに。

今まで気づかなかった私、どうかしてる。


「ごめん、渚。先に謝っとくから怒らないで聞いてくれる?」


「むぎに怒るとか天と地がひっくり返ってもないから安心して」


「じゃあ、言うけど……」


「うん」


じっと渚の目を見つめて、ゆっくり口を開く。


「渚が重いって言ってた意味、やっと分かりました……」