ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「……知ってる、かはわかんないけど、同じ2年の人」


「名前は?」


「そ、それ聞いてどうするの?」


「名前は無理?
なら部活。あと、見た目の特徴は?」


「話聞こう!?
ちょっと落ちついて……」


「落ちついてるよ。
名前だけ教えてくれたら、俺めちゃくちゃ嬉しいんだけどな」


「だ、だからそれ聞いてどうするの?」


「……どうもしない」


うそだ!

今、30秒くらい間あったよ!?


一体その人になにする気なの!?


「大丈夫。
むぎは気にしなくていいよ。
つか、そいつのことは記憶から抹消でよろしく」


「ま、抹消!?」


なんで!?


「さっきから驚いてばっか。
むぎがその男に振り回されてる感じでまじでやだ」


「ああ、ううん?」


「どういう反応なの、それ」


振り回されてるのはこっちのほうだよ!

渚の言葉がぜんぶ都合よく聞こえて、動揺しないように必死なんだから!