「おかあさま、エルをつれてワンちゃんとあそんできてもいいですか?」

 テラスで揃ってお茶とケーキを味わっていると、マシューはだんだん退屈してきたらしい。
 もちろん、美味しいお茶とケーキはお腹いっぱいに膨らませた後で。
 私が頷くと嬉しそうに笑って一目散に駆け出す。

 ケーキを頬張っている最中からテラスの近くでお座りして待ち続ける犬が気になって仕方なかったのだろう。

 侍女がエルを抱き、従者と共にマシューの後を追って歩いて行く。

 スチュアート家の庭は広く、子供が駆け回って遊ぶには絶好。 足下は芝に覆われているから石に躓いて怪我する事も少ないはず。
 とても丁寧に手入れをされているからこそ、安心して遊ばせられる。

 おそらくはネヴィルの両親であり、マシューの祖父母である伯爵夫妻の配慮あってこそだ。

 というのも、私達家族が住んでいる邸は空気と穏やかな環境を第一に考えている為、庭はここのようには広くない。 遊べるとしても、駆け回るほどではない。
 だからマシューは久しぶりにここに来るのを楽しみにしていた。