「どうした、フロタリア?」

 ネヴィルが私の顔を心配そうに覗き込む。

「ネヴィル、今……誰かが」

 誰かの声が聞こえた気がした。

『お母様、大丈夫ですよ』

 とても大切な、心の温かくなる声で、私の背中を擦る手が感じられた気がしたのだ。

『いいのですよ、それで』

 忘れる事を怖がらないで、そう言われているようだ。

「何でもないわ」

「エルはマシューが連れて行ってしまったよ。 さぁ、俺達も中に入ろう」