どこの家庭でも躾には厳しいもの。 特に長男は父親の爵位を継ぐ立場。
 自覚させる為にも甘えは許されず、自我が目覚める前にそこを意識させる必要がある。

 大人の手を借りながらも小さな身体でしっかりと馬車から降り立つ姿が感慨深い。

「マシュー、おじい様とおばあ様にご挨拶なさい」

「はい」

 彼は父親の言葉を受け、握っていた母親の手を離した。
 そして玄関ポーチで出迎えに立つ伯爵夫妻、仕える執事以下使用人を前に二、三歩歩み出る。

「おじいさま、おばあさま。 このたびはおでむかえ、ありがとうございます」

 伯爵夫妻は嬉しそうに孫の挨拶を聞いている。

「マシュー、大きくなりましたね。 もう立派なお兄様です」

「はい、ぼくはエルとおかあさまをまもれるようになります」

 希望ではなく、断言だ。

「まぁ、頼もしいわ」