「とても驚かれたでしょうね」

「具合がお悪いだなんて知りませんでした」

 エマ様は土気色の顔色をしていても、話ができる。 だから私にはどこが悪いのか、どういう状態なのかわからない。
 わかるとすれば、エマ様の炎が消えようとしている事だけだ。

「フロタリア、話をする前にどうしても聞きたい事がある。 学校を休んでいた数日間はどこへ行っていた?」

「あの……申し訳ありません、ネヴィル様。 勝手な事をしてしまい、父にも叱られました」

「それはいい、わかっている」

「私はネヴィル様の婚約者として育ってまいりました。 ずっとそれが当たり前で、疑った事もありません。 ですが、学校で今まで知りえなかった世界を知り、どれだけ自分が甘やかされて来たのかを知ったのです。 そして貴族に身を置く人間としても一人の人間としても、もっと知りたいと思いました。 そこでこれからの身の置き所にも思い至りました。 コーンエル家には私一人で、男子はおりません。 父はご自分の弟に継がせるつもりのようですが、私にその資格がある限り、可能性はゼロではないと思うようになったのです」

「君が男爵を継ぐ、と?」

「ネヴィル様は伯爵を継ぐ方です。 それにエマ様がいらっしゃるのなら私は……」

 ジャクリンがもし本当に養子だったとしても、彼女にはその資格はない。
 だからやはり私が適任だと今でも思っている。