「デューク、ジャクリン。 そこまでですよ」

 意識が薄れ行く中、ジャクリンの手が止まった。 デュークも気付いたらしく辺りを見回している。
 部屋のドアは閉まったままだ。 なのに聞こえるのは声だけ。

「え、何?」

「誰だ!」

 あるはずのない靄で霞み始め、妨げられた視界で目の前すらよく把握できない。
 他には誰もいないのに妙な気配が漂う。 そう感じたのは私だけではないらしい。

「何、何なの?」

「ジャクリン、お前ではないのか?」

 声の主と気配の気味悪さが部屋中を包む。
 声は一人きりなのに、気配は数人感じるのだ。