入学してまもなくの頃だった。
 実家では見た事のない魘される夢を見始めたのだ。
 それは悪夢というにはあまりにピッタリで、何度も同部屋のコゼットに起こされた。

 そのコゼットが部屋を替わると聞かされたのは、昨日の昼食後、ラウンジでの歓談の時の事だ。

「貴方との同部屋はとても楽しかったというのに寂しくなるわ」

「フロタリア様、仕方ありません」

「それはわかっているのよ。 それでもね、入学して半年が経過したというのに部屋を替われだなんて……」

「エマ・ハミルトン様は上級生ですもの。 逆らうなんてできません」

「確か、侯爵家の方だったわね」

「私の親がエマ様のお父様に昔とてもお世話になったらしいのです」

「たまには私の所にも遊びに来て頂ける?」

「えぇ、もちろんですわ」

 そう多くはない荷物を両手に抱えて、無表情のままのコゼットは冷めた顔で部屋を出て行った。