「私に姉妹はいないわ……。 それに庭師って、確かもう結構なお年だったはず……」

 徐々に喉も思考も戻りつつある、声も平気だ。

 そうだ、私に姉妹はいない。
 コーンエル家の子供は私一人きりだ。 だからこそ、父にあの話をしたのだから。

「庭師の親父は若い時に独り身になった。 俺の母親は病気で死んだからな。 そして長年の寂しさから親父はコーンエル家のメイドと関係を持った。 そして産まれたのが俺さ」

「私は庭師とはあまり顔を合わす機会がないから、よくわからないわ。 それでも貴方が彼でない事はわかる。 だって今の貴方は、庭師の息子よりもっと年上に見えるもの」

 ブランドル男爵家の次男という肩書きが嘘なのか、それとも庭師の息子が嘘なのか。 だとしたら、ジャクリンが私の姉妹だというのも嘘に決まっている。

 なのに、二人は顔を見合わせて笑う。
 いや、馬鹿にしたように、だ。

「なぁ、フロタリア。 まだわからないのか?」

「わからない? 何を?」

わからないのは全てだ。 彼らが何者で、何を知っているのか。

「俺達はお前の未来を知っている」

「え?」