ジャクリンの様子がおかしい。 いつもの明るく朗らかな笑顔がない。
 いや、笑っているのに目の奥が笑っていない。
 まるで私を睨んでいるかのようだ。

「謝罪いたします。 私、先ほど間違っておりました。 学舎の方にいらっしゃらない方が、ではございませんでした」

「ジャクリン?」

 私は思わず、近付いた彼女との距離を取った。
 本能的な危機感というより、覚えのある嫌悪感だったからだ。

「フロタリア様はネヴィル様と婚約破棄なさるのでしょう?」

「確かに帰宅したのは婚約の件よ」

「でしたらもう、お二人が結婚する可能性はないわけよね。 安心したわ」

 ジャクリンの私に対する態度が、見下した雰囲気を感じるのはどうしてなのだろうか。
 こんな事、今まで一度もなかったというのに。

「貴方、何を言っているの?」