「お帰りなさいませ、フロタリアお嬢様」

「ただいま」

「旦那様がお待ちでございます」

「ありがとう」

 玄関先で執事と侍女の出迎えを受けた私は、馬車に積んだ荷物をそのままにすぐ階段を上がって行く。

 予め、突然の帰宅を文にて知らせていたとはいえ、私に何かあったのではないかという懸念があったのだろう。
 父は本来なら家にいないはずだ。 男爵として、やらねばならない事は毎日山積みなのだから。

 それでも書斎で私の帰りを待っていた。
 きっと大事な相談なのだと予測していたからだ。

 階段を上がり、真っ直ぐに書斎へと向かう。

 父は私の話を聞いたら、どう思うだろうか。
 きっと激怒するはずだ。 或いは呆れるかもしれない。

『そんな話は聞いていないぞ。 だから大人しく花嫁学校に行けと言ったのだ』

 執務机を叩いて、そう返されるのは目に見えている。
 それでもこれは、私の判断だ。 自分で決めたのだ。