それから五日後。
 ラウンジにて、エマ様の口から皆にある件が伝えられた。

 それは婚約者の、隣国の王女との婚姻の発表についてだ。

 実は、その相手とエマ様は婚約をしていなかった。
 誰もが公爵家と婚約関係を結んでいると思っていたし、そう聞かされていた。
 だから皆の衝撃は大きく、まさかエマ様ほどの令嬢が偽りを述べたのだろうかと落胆したのだ。

 だが、そうではなかった。
 エマ様は一言も自分の口で、婚約者がいるとは言っていない。
 噂好きな面々の思い込みから、次第に偽りが真実であるかのように伝えられていたのだ。

 そして、エマ様は意外な事を言った。

「愛する方がおりますの。 その方と婚姻を結ぶ為には大きな壁がありまして、それを乗り越えなくてはならないのです」

 その壁がもうすぐ取り払われようとしている、ようやく想いが叶うのだと嬉しそうに微笑んだ。