何もわからない、エマ様が何者で私が何者で、そしてネヴィル様とエマ様の関係も。

『ネヴィル様を愛しています』

 私の愛と彼女の愛は違うと言う。
 ネヴィル様の、彼女を見つめる目の奥に愛が灯っているのは確かなのに。

 貴賓室から去り際、エマ様は言った。

『誰の言葉も信用なさらないで』

 夢なら何度か見た、悪い夢を。
 内容は覚えていない。 とにかく嫌な、不快感しかない感覚。
 だが、それはただの夢だ。 現実に起きた事ではない。

「フロタリア様、何か心配事でも?」

 気分の塞いだ私をジャクリンが気遣う。

「いいえ、何でもないわ」

 結局、エマ様は詳しい事を何も教えてくれなかった。 疑問と不信感ばかりが私の心に植え付けられただけだ。