「フロタリア様、貴方はお一人でここにやって来た。 そして襲われたのでしょう?」

「エマ様、何をおっしゃっているのですか?」

「ごめんなさい。 その場を見たわけではないから、あくまでも想像ですが」

「いいえ、私は来た事がございません。 入学してからはネヴィル様やジャクリン達とずっと一緒でしたし、一人で行動するなと言われていたので」

 私の体調を、或いは噂の婚約者を取られた笑いの的であろう私を心配していたのだから、こんな風に一人で行動するなんてほとんどなかった。

 テーブルの上に目をやると、湯気を放つお茶のカップが寂しそうに置かれている。 手に取って飲め、という声が聞こえてきそうだ。

「美味しいお茶ですよ。 フロタリア様」

 部屋の隅で私の様子を窺っていたコゼットが冷めた表情で言う。

 彼女は冷たく見えても、本当は優しい人。
 何を考えているかわからない無表情な顔は、冷静に周りが見えているからだ。

「貴方がここで飲んだ薬入りのお茶とは違いますわ」

エマ様の言葉の意味がわからない。
さっきからいったい何を言っているのだろうか。