「どうしてそんな事を言うのだい?」

「わかりません。 ただ、今言わなくてはいけないと思ったのです」

「フロタリア……」

「明日からはジャクリンと二人、平気です。 図書室ではデュークもいるでしょうし、一人ではありません」

「デュークか……」

「彼は親切な友人です。 共通の話題がありますから飽きません」

「だが、どんな人物かわからない。 気を許してはいけない」

「大丈夫です。 私の事はお気になさらずに」

「フロタリア、今度時間を取って話をしよう。 大事な話だ」

「いいえ、その必要はありませんわ」

 この学校に来て良かったと思った。
 今まで私の意思で何かを考えた事があまりなかった。
 ネヴィル様が他の令嬢達と楽しく過ごすのが嫌で、私も彼の過ごす輪の中にいたかった。 ただ追い掛けたかっただけだ。
 そんな子供のような私の価値観を変えたのが、この学校で出会った人達と、世界を広げた書物。

 もしもネヴィル様も、ここでの生活によって新たな世界が広がったのだとしたら、それを支えるのは私ではなく、エマ様なのだ。