エマ様が怖い? 違う、そうではない。
 私は何を怖がっている? わからない。
 何かとても重要な、私の命より遥かに。 そんな何かを忘れている気がする。

「俺はフロタリアの側にいると約束したよ」

「私はもう平気ですわ。 身体は健康そのものですもの」

「君は俺の側にいればいい。 拒否権はないよ」

「ネヴィル様は我が儘ですわ」

「フロタリア、失うのがわかっていても、それでも手放したくないのも我が儘なのだろうか」

「流れに逆らわずに生きるように教えられてきましたわ」

「だとしても、君はいつか俺の側からいなくなってしまう」

 それはネヴィル様の方ではないのかと問いたかったが、彼の真剣な眼差しを見ている内に、ネヴィル様が今ここではない、見えないどこか遠くに想いを馳せているのがわかった。

 そういう時の直感とは当たるものだ。
 あぁ、私はネヴィル様とさよならをするのだ、と。
 今ではなかったとしても、いつかそう遠くない未来に。

 だからエマ様がここにいるのだ。
 ネヴィル様に寄り添うエマ様の姿がとても温かい心地がするのはきっとその為だ。