図書室までのわずかな道中、私とネヴィル様の後方をジャクリンと殿方がついて歩いて来る。
 殿方はネヴィル様の同部屋の方で、世話係のような役目らしい。 所謂、ジャクリンと同じ。

 入学してからというもの、ネヴィル様はこうしてよく私に会いに来てくれる。

 意識不明に陥った件がよほど両親の不安を煽ってしまったのだろう。 ネヴィル様がついているのなら、という条件で入学を許可された。

 だが、私の本心としては入学への希望が薄らいでいたのは確かで、とても楽しい寮生活が送れるとは思えなかった。

 ところがいざ入学してみると、令嬢達との時間や学びはもちろん、そこで出会う初めての経験がそんな私の不安を吹き飛ばしたのもまた確かだった。

 だからネヴィル様と過ごす時間は昔の二人と変わらず、穏やかな優しい風が流れる錯覚を起こすのだ。

本当なら私ではなく、エマ様との時間の方を優先したいだろうに、今はそのエマ様が家の方に帰っていて、ここにはいない。
入学してからずっとネヴィル様は私の身体を心配してばかりだ。 それはもしかしたら婚約者という建前のせいなのかもしれないが。