「フロタリア様……」

「ねぇ、ジャクリン。 教えてくれないかしら」

 そこは中庭。 向かい合う昼下がり、言い淀むジャクリンにさらに詰め寄る。

「ですが、まるで告げ口のようで……」

「だって、しばらく同部屋にいたのでしょう? そこでの、貴方の知っている事を教えてくれるだけでいいのよ」

「聞いてどうなさるのですか?」

「どうもしないわ。 知りたいだけなのよ」

「エマ様はとても優秀で、所作も礼儀作法も非の打ち所のない方です」

「確か、婚約者がいらっしゃるのよね?」

「次期公爵になられる方で、現在は王宮内にいらっしゃるのだとか」

「そんな立派な婚約者がいらっしゃるのに、どうして?」

「さぁ……。 私から見たら、立場関係無しに欲しい物は手に入れたいと思いますが」

「ジャクリンでも、そう思う事があるの?」

「私は貴族ではありませんもの」