結局は倒れた原因も何もわからず、学校へは遅れて入学する事になった。

 だが、当然ながら母は大反対。
 もしも学校で、もしくは寮で再び倒れるような事があったら、と心配なのだ。

 ネヴィル様が言った。

「大丈夫ですよ。 できる限り、俺がついていますから」

 学舎や寮以外で婚約者と行動を共にする令嬢は多い。
 それは周囲を警戒し、断固たる自分の地位を確保する為でもある。

「ネヴィル君が側にいてくれるのなら幾らか安心だ」

 父は母に同意を求め、母も頷く。

 だが……。

「嫌、嫌!」

 ネヴィル様が私の側を離れないなんて。
 嬉しいはずなのに、身体が拒否を求める。 どうしてだか、震えが止まらない。
 何か、とても重要な何かを忘れてしまっている気がする。