医師の診断の結果、身体には特に異常はないものの、倒れた原因と意識不明に陥った理由はわからないという。

 まるで何か悪い魔法でも掛けられたかのようだと、両親は不審がる。

「ネヴィル様はどうしてここに?」

 彼は寝台から少し離れた窓辺近くで様子を窺っている。

「フロタリアが倒れたというコーンエル男爵からの文が学校に届いてね。 それで急ぎ、やって来たのさ」

「あの、エマ様は……?」

 不意に口から出た誰かのそれは私の知らないはずの名前。 いったい、誰だっただろうか。

 不審そうに首を傾げるネヴィル様を見ていると、誰かもう一人の姿が見える気がする。
 ネヴィル様が宝物のように見つめる、誰か。