ネヴィル様の声を聞いたような気がした。

 フロタリア、と呼ばれたような気がした。



☆ ☆ ☆



 朝の目覚めには程遠く、室内は薄闇で、燭台に灯された蝋燭の火がボォッと天井を照らしている。

「フロタリアお嬢様が目を覚まされました!」

 声の方に顔を向けると、寝台近くの脇に立って、心配そうに胸元で両手を握り締めている侍女が見える。

「フロタリア、大丈夫か?」

 私には侍女の姿しか、すぐにはわからなかった。
 だから彼女以外の誰かが私の名を呼ぶ、とても切羽詰まったその声で徐々に気づいたのだ。

 あぁ、またか。 夢か現実か、あの嫌な感じ。
 だが、今日は少し違う気がする。
 わけのわからない身体の痛みと粘ついた不快感、沸いてくる恐怖が絶望で包むのだ。