この学校には貴賓室がある。
 所謂、上位貴族と呼ばれる地位にある人間だけに許される休憩室のようなもの。

 ジャクリンやコゼットのような立場なら、使用人代わりの世話係としての立ち入りを許可されるが、私のような下位貴族はその立ち入りすら許されない。

 あるとしたら招かれた時のみ。
 だから誰もが上位貴族にすり寄り、媚びへつらって恩恵にと考えるのだろう。

 寮の部屋で小説を読んでいると、ジャクリンがどこからか帰って来た。

「フロタリア様、上級生の殿方より伝言がございます」

「上級生?」

 私達令嬢の寮はもちろんとして、学舎も殿方とは中庭を隔てた少し離れた場所にあるので、休憩時間でのラウンジや食堂以外では顔を合わす事が多くはない。

 最近では図書室や広間も男女共に利用する人が増えて来たので、私やデュークのように意外と顔見知りになるケースもあるのだが。

 それ以外で男女の、例えば婚約者同士が親密に利用する場所として存在するのが貴賓室だ。

 ここはある意味、密室でもあるので友好を深めたい者や知られたくない者同士の格好の場でもある。