「本を借りに行くだけよ」

「そこにデューク様もいらっしゃるのでしょう? あまり親しくしては……」

「彼はお友達よ。 それに二人きりで会うわけではないのだもの」

「それはそうですが……」

 それに小説に夢中になっていれば、ネヴィル様とあの御令嬢との事を考えなくてすむ。
 嫌な想像を頭の隙間に置きたくない。

 入学後、ほとんどネヴィル様と会話らしい会話ができていないのだ。
 顔を合わせても、いつもネヴィル様の視線は他の御令嬢へ向いている。

 だからと言って、婚約者の立場に変わりはない。 ただ、とにかく寂しかった。

もしかしたら私は、その寂しさを埋めようとしているのかもしれない。
読みたい小説があるから、という理由付けで。