「フロタリア様、また今日も図書室に行かれるのですか?」

「読みたいのがあるのよ」

「ですが、あまり頻繁では妙な噂が立たないとも限りません」

 その日の学びを終えた私は直ぐ様、その場を後にして図書室に向かう。

 ジャクリンが心配するのは当然で、ここ最近の私は以前にも増して足を運ぶ機会が多くなった。
 というのも、デュークに薦められた小説がとてもおもしろくて夜遅くまで読んでしまったからだ。

 今までなら小説のような空想物は読もうとはせず、どちらかと言えば歴史や偉人伝といった過去の出来事を扱った書物の方が多かった。
 それはネヴィル様の多少の影響も関わっているが、私自身が読みたい部類ではあったから。

 ところが、学校に在籍している他の令嬢の方々は恋愛小説をよく好むらしく、ラウンジでもその話題が上る事が時々あった。

 他の令嬢の方々の話題についていけなかったところに、デュークの薦める小説の登場だ。
 読み漁りたくならないわけがない。
 それは冒険物だったり、家族物だったり。 時には恋愛物や推理物も。

 今読んでいるのは冒険物の上巻。
 おもしろくて一気に読み進めたせいで、早く続きが知りたくて仕方ない。