「俺はデューク。 ブランドル男爵家の次男、デューク・ブランドルと申します。 ここは学校ですので、気軽にデュークとお呼び下さい」

「私はフロタリア・コーンエル。 コーンエル男爵家の長女です」

「あぁ、貴方がフロタリア嬢」

「私の事をご存じですの?」

「いえ、男のくだらない雑談の際に綺麗な男爵令嬢がいらっしゃると聞きまして」

「それはきっと他の方とお間違えなのですわ」

「ですが、貴方がネヴィルの婚約者なのでしょう?」

「知っておいでですの?」

「同じ年ですし、共に学んでおります」

 外の世界とは違う、共に学ぶ場所なのだから、デュークはそう言う。

 彼はとても気さくで話しやすく、私がジャクリンを探そうとしていたところを一緒に動く行動力も持っていた。

 そして貴族とは思えないくらいの穏やかな性格が好ましく、誠実さを絵に描いたような人柄も感じた。
 何より、噂の種を撒く事のないように配慮も忘れない。

 腐ってしまいそうな日々の中で、立ち止まって笑える時間が今の私にはとても貴重に思えた。