学舎から図書室までは中庭を横目に見ながら歩くのだが、今日はその中庭を斜めに通過する。

 たまには外れてみるのも良いと思ったのだ。
 すると、向かい側からエマ様がコゼットを連れて歩いて来る。

 コゼットはジャクリンが同部屋になる前に一緒だった。 ジャクリンとは正反対の冷たい雰囲気は、エマ様と一緒の今もそれは変わらないようだ。

 私は正直、エマ様に声を掛けるのは躊躇われたが、上級生の侯爵令嬢を無視するわけにはいかない。

 そして二人との距離が近づいて来た。

 他の令嬢と交わす挨拶と大差なく、それでいて心を殺してありきたりの言葉を交わして通りすぎようとした時だった。

 私の耳元でエマ様の口が微かに開いたのだ。

『ごめんなさいね』