入学からの時間はあっという間。

 世の中にはこんなにも色々な人間がいて、    思考も何もかも違うものなのかと驚きばかりだ。
 家庭教師から学ぶだけでは得る事のできない経験があるのが嬉しい。

 だからネヴィル様に会えなくても、遠くから見ているだけでも楽しかった。
 たまに目が合えば微笑んでくれるし、頑張ってるようだねと私にわかるように頷いてくれる。

 今はそれだけでいい。 例え、ネヴィル様の隣に並ぶのが私でなかったとしても。

 ある日の昼下がり、学びに必要な本が図書室にあると聞いた私はジャクリンを伴って向かう事にした。

 ジャクリンには婚約者がいない。 ご両親はおそらく貴族のどなたかと婚姻させたいだろう。
 こんなに可愛くて素敵な女性なのだ、縁談はいくらでも舞い込むはずだ。

 実は既に縁談があるのに、ジャクリンに好きな殿方がいて婚姻に至らないという理由でもあるのだろうか。

「私ね、ここに来るまで狭い世界にいたのだと気づかなかったの。 守られるのが当然だと思ってたわ」

「私は逆かもしれません。 元々平民ですので、フロタリア様のような方の気持ちはよくわかりかねます」