噂話はどこでも同じ。
 内容はいつでも、どこの令嬢とどこの誰がとか、あの男は奥方の他に何人もの愛人がいるとか、そんなスキャンダラスなものばかり。

 食堂でもラウンジでも密やかに交わされるのはあの二人の関係。
 だから、人が少ないだろう中庭へと移ったのに、ここでもそんな会話が飛び交う。
 その会話の中心人物が無関係なら興味は持たないが、やはりそうはさせてくれない。

 後方から聞こえて来たのは、ネヴィル様と同級生らしき殿方数人の立ち話だった。

 涙も出て来ない、感情も定かではない、何も浮かばない。
 ネヴィル様を追って来たのに、私は何を見たのだろうか。

 噂の真相は時に残酷だ。
 真実と嘘が同化して何をも見えなくする。
 そして嘘が真実になり、真実が嘘へと形を変えるのだ。

 私にはどちらもわからない。
 確かなのは二人が親密らしいという事だけ。