ネヴィル様に会いたい、話がしたい、側にいたい。 ラウンジに人がいてもいい、私は彼の婚約者なのよ。

 ところがラウンジ内をいくら探してもネヴィル様がいない。
 男女の比率から考えて、その中を歩き回って探すのは難しい。
 どれだけ探してもみつからないのだ。

「フロタリア様、もう行きましょう?」

「ネヴィル様がいらっしゃらないわ……」

「またいつでも会えますわ、フロタリア様」

 いつもはここにいるはずなのに。 共に学ぶ事はなくても同じ学校の敷地内にいるのに、こんなにも会う機会に恵まれないなんて。
 まるで誰かが邪魔して阻もうとしているようだ。
 ジャクリンに促され、図書室へと向かう事にした。

 こんな気分の時は彼女の明るさが助けになる。
 些細な会話が上げてくれるのだ。

 ところが図書室まで近づいた時、その扉付近の片隅に人影らしき姿が見えた。
 そこはちょうど人が隠れるサイズの奥まった場所で、何度か男女のそういうシーンを目にした事がある。

 前にネヴィル様から聞いた。 婚約者のいる男女が人目を憚って密会するらしい。
 自分はそんなチャンスには恵まれないが、此処彼処で目撃するから目のやり場に困るのだ、と。

 まさか……。