転生令嬢~彼が殺しにやって来る~

 コーンエル家の養子だったのは、ほんの数年。
 その間に私が偽りの家族と共に過ごしたのはほんの数回でしかない。

 逃げたのだ。
 あの家のくだらない良心から。 私の神経を掻き乱すあの女から。

 唯一、あの家での収穫と言えばデュークの存在。
 いつも虚ろな目をしていた彼が向ける視線は、決まってあの女だ。
 好意を持っているとすぐに気づいたが、当然ながら歯牙にも掛けない。 あの女は庭師の息子なんて相手にするはずがなかったのだ。

 庭で摘んだ花をデュークがあの女に渡した時の事はよく覚えている。
 あの女は嬉しそうに礼を言いながらも、それを部屋に飾る事はなかった。 その花は侍女の手へと渡り、なんと排泄の場へと置かれたのだから。
 おそらくは侍女の独断行動だったのだろう。
 それでも怒りがあの女へと向く感情を私は寧ろ、喜んだ。
 それからのデュークの憎悪は手に取るように簡単で、憧れが変化するのも感情を操るのもなんとも容易い。
 利用する価値のある男だと思った。
 そして手を組んだのは、私があの家を出てから数年後。

 後悔も懺悔もするつもりはない。
 あの女への憎しみだけは消えようがないのだ。

 ただ、できる事なら葬りたかった。
 両親と同じ土の下に。

 私のこの手で。