身体と心がバラバラになるような感覚はない。 痛みや苦しみ、悶え狂う恐怖も何も。
 ただ閉じていた目蓋を静かに開けて、そこに見渡す景色が懐かしみを感じるだけだ。

 産まれ育ち、喜びや嬉しさを噛み締め、悲しみを味わった本来いるべき場所。 そしてお母様を失い、お父様を絶望に陥れた世界。

 過去のお母様を救えたからといって、この世界が変わるわけではないし、お父様を楽にできるわけでもない。

 それでも、あの世界でお父様とお母様が幸せに暮らせるのなら、きっと私のした事は間違いではなかったと思えるはず。
 だって今、私がこうして戻って来れた事が何よりの証だから。