「フロタリア、覚えているかい? マシューとエルが庭で犬とじゃれ合っていた時。 こんなにも幸せな時間、俺はこの先決して失う事はないと思っていた。 ところが、マシューが十二歳、エルが十歳の時だ、君は床に伏せて命を失い掛けた。 あの時、もしも君を失ったら全てが無になるとさえ覚悟したものだ」

「あの時は貴方にも、マシューやエルにも本当に辛い思いをさせてしまったわ」

「それが今ではエルの、そして来年にはマシューの結婚だ。 俺達は幸せ者だね」

「えぇ、そうね。 これからはネヴィルと私の二人。 仲良く生きて行きましょうね」

「もちろんさ」

「父上、母上。 エルがあちらで見ていますよ。 夫婦となって初めてのこのパーティーで挨拶をしたいのでしょう」

「あら、そのようね。 それにしてもマシュー、見てご覧なさいな。 エルの美しさは他の誰にも劣る事はないわ」

「当然ですよ。 俺の妹なんですから」


☆ ☆ ☆


「エル、おめでとう。 これから妻の役目をしっかり果たすのよ。 誇りも忘れずに」

「私、お母様のような妻になりたいと思っていますわ」

 そしてエルの隣に立つ騎士服に身を包んだ立派な紳士は私達、義両親に最初の挨拶。 それは誓いの言葉でもある。

「エマヌエルは僕が生涯を通して愛し、守り抜きます」