エルが恋人との結婚の許可を申し出た時から一年。
 ネヴィルは私とそうだったように、やはり娘のエルにも貴族との婚約をさせようと拘っていた。
 だからネヴィルの許可を得るまでに時間が掛かったのだ。
 こんなやり取りをネヴィルとエルの間で交わしたのがつい最近のように思える。

 ネヴィルは娘の一世一代の晴れ姿を見ながら感慨無量な顔で、それでも相手がただの騎士である事に釈然としないようだ。

「ネヴィル、私達のエルは聡明な子よ。 大丈夫、あの子が選んだ伴侶に間違いがあるわけないわ」

「確かにそうだが……」

 エルの兄マシューは婚約者を伴って妹の美しさに感動しながら、それでもやはり同様に呟いている。

「エルは俺の後をいつも追い掛けて可愛かった。 初めて言葉を喋った時も俺の名前だったのだ」

 婚約者はマシューの背中に手を当てて宥めながら、この喜びをすでに家族の一員として祝っている。

 そしてネヴィルはネヴィルで昔を思い出すのに、懐かしい楽しさばかりではないと私もわかっている。