整理した頭の中。口を突いて出るぼやきに、雪深は「いーじゃん」と他人事のような返しをしてくる。
別に勘違いされて困るようなことはないけど、後半は雪深のペースに乗せられてしまったせいで、結局彼女に名乗ることさえ出来なかった。
「ご主人様ですってあんまり言いたくないし。
……いや、彼女じゃないなら一緒に来た理由も謎じゃん? だからさ、彼女ってことにしたの」
「……理には適ってるから許してあげる」
「どーも。……それ、に。
彼女になって欲しいっていうのは、嘘じゃないし」
「ごめん雪深、聞こえなかった。何?」
エレベーターの扉が開く音に紛れて掻き消された声。
なんて言ったの?と聞き返したけれど重要なことではなかったのか、んーん、と誤魔化されて終わった。
任せっきりのデートプラン。
次はどうするんだろうと、行き先を決めているらしい雪深に合わせて歩く。今日は天気も良くて暖かい。普段は家にいることが多いから、青空の下をこうやって歩くのは久しぶりだ。
「デートにもってこいの天気だと思わねえ?」
「……わたしは雨も好きよ?」
「名前に雨って入ってるくらいだからねえ」
雨が麗しいと書いて、雨麗。
直接聞いたことがないから本当なのか定かではないが、どうやらわたしの名前をつけたのはお父様らしい。なぜか勝手にお母様だと思っていたから、少し驚いたのを今でも覚えてる。
「雨が降ってる時は、なぜかすこし落ち着くのよ」
「ああ……なんかわかるかも」
静かに、自分を見つめられるような。
そんな空間を作り出してくれる。



