だから。
自分からは決して、女の子に声をかけなかった。
「さみしいならわたしが構ってあげる。
女の子と遊ぶのだって、好きにしていいわよ。自分に言い寄ってくる子ばかり相手にするから、すぐに揉め事が起こるんでしょう?」
「んー……しばらくは、いいかな。
お嬢がこうやって俺と向き合ってくれたの考えたらさ。なんか、もうちょっと色んなことに気ぃ抜いても、案外なんとかなるかなって思えたし」
へらっと笑った雪深が、「お嬢」と甘い声で呼んでくるから。
なに?と聞けば、ちゅ、とくちびるに触れるだけのキス。もう一度触れたかと思うと、今度は身体が布団の中に沈んだ。
「どうしてわたしのこと押し倒してるの」
「んー、さっきのお返し?
俺のこと満たしてくれたからさ。お嬢のことも満たしてあげようかと思ったんだけど……」
耳元に寄せられたくちびる。
どこから出してるの、と思うくらい甘くて吐息混じりな声で「二人っきりで楽しも?」なんて囁いてくるから、堪らず彼を押し退けた。
「……同い年とは思えないほど色気出すのやめて」
「別に出してねえよ?
ただ、お嬢とちょっとイイことしたいなって、お誘いしてみただけじゃん」
「自分の安売りはしてないって言ってるでしょう」
まったく。
これだから遊び人は、とため息をついて「さっさと部屋に帰りなさい」と背を向けたら、今度は後ろから抱きしめられた。何がしたいんだ。
「ごめんって。
何もしないから……あさまで、一緒にいて」
「、」
「昨日の朝、胡粋と一緒だったらしいじゃん。
……ほら、俺ともデートしよ? 俺がプラン考えてあげるから、行きたいところ教えてよ」



