【完】鵠ノ夜[上]




……なぜに線香花火。別にいいけど。

しかも相手は俺なんだ。別にいいけど。



「……対決しねえ?」



「……なに企んでんの」



「人聞き悪いな~。

……ただ、俺が勝ったら、告白していい?」



ん?と。

引っ掛かったワードに、首をかしげる。していいも何も、しょっちゅうレイに好きだって言ってんじゃん。というか告白したんじゃなかったっけ?



「告白したけど、やっぱりちゃんと意識してほしいからさ……

もっかい、真剣に言おうと思って」



困ったように笑う雪深。

普段はへらへらしてるくせに。……レイへの気持ちだけはどうしようもなく本物で、好きだって見せつけられてるみたいな気分になる。




「じゃあ俺も……勝ったら言おうかな」



「ん。負けたらどうするよ~」



「レイと1ヶ月デート禁止」



滅多にふたりで出掛けることもないから、負けた時のことは緩めで。

雪深も納得したようで「りょーかい」と、持っていた線香花火の一本を俺に差し出した。



「じゃあやるよーぅ」



なぜか一番楽しそうな芙夏の声で、線香花火に火をつける。

小さな羽のように火が上がると、あっという間に丸くなって、ぱちぱちと儚げな雰囲気で火花が散っていく。



男三人で線香花火してる絵面ってキツい。

さっさと決着つけばいいのに、なんて、わずかな潮風に煽られた線香花火は。──ぽつ、と落ちた。