【完】鵠ノ夜[上]




「ぼくは……

いまのこいちゃんの方が、こいちゃんらしくて好きだよ」



「……憐れでしょ」



「なんでそういう言い方しちゃうのー。

……苦しいぐらい誰かを好きになれるって幸せだもん」



「………」



「レイちゃんも、たぶんわかってるよ」



一人傍観していた彼女の元に、憩さんが歩み寄る。

遠くて声は聞こえないけど、ぽつぽつと会話しているふたり。憩さんがレイのことを本当に大事にしてるっていうのは、この短時間ですぐにわかった。



レイに、素っ気ないし冷たいけど。

でもその裏には優しさと愛おしさばかりで。




「……お似合いだよね、レイと憩さん」



あのふたりだけ、空気が違う。

くす、と彼女が笑って、こちらに気づいて手を振ってくれた。芙夏が振り返すのを、彼女の隣で見ている憩さん。



まるで自分のものだって言うみたいに。

声の聞こえないここでも、彼が「雨麗」と呼んだのがはっきりわかった。



「胡粋~」



滑らかな撫でるような声で名前を呼ばれて、意識を引き戻される。

すっかり大人組に懐いた雪深と、話が合うのかいつもより話していたはとりと、雛乃さんのいじるターゲットにされていたシュウ。



だからこそ芙夏とふたりで話していたわけだけど、そこに乱入してきた雪深は、悪戯っぽく笑う。

その笑みさえ綺麗なんだから、この男も大概ムカつく。レイに恥ずかしげもなく好きだって言ってるのも、なんとなく、ムカつく。



「線香花火しよ? 芙夏もする?」