「、」
……ああ、そ、っか。
レイちゃん、言ってたじゃん。私情を挟んだら、優先するのはぼくたちよりも小豆さんだって。そればかり気にしてたけど、そうじゃない。
私情を挟まなかったら。
レイちゃんが優先してくれるのは、いつだってぼくたちだ。
スマホを取り出して写真フォルダを開くと、確認するのは1ヶ月分の稽古の時間割表。
これはぼくのだけど、毎回半月前には全員にこれが渡されて、別邸の冷蔵庫には全員の時間割を見やすく纏めた紙が一枚貼られてる。
それで予定を合わせたり確認したりするけど。
……ずっと、小豆さんか別の使用人さんが組み合わせてくれてるんだと思ってた。でも違う。
「レイちゃん……」
この表を作ってくれてるのは、レイちゃんで。
ぼくたちのことを最大限に考えて、無理しないようなスケジュールと時間にしてくれてるのはレイちゃんだ。……だって。
「レイちゃんのばか……
なんで黙ってかっこいいことしちゃうかな……」
ぼくとはりーちゃんは、どちらかといえば稽古は平日の夜に多くて、土日の午前にぽつぽつとある。今日は部屋の関係でぼくは昼からだけど。
ゆきちゃん、こいちゃん、シュウくんの稽古は、金曜の夜と、土日のお昼前からの稽古が多い。──理由は、一つだ。
3人が、朝起きるの苦手だって知ってるから。
翌日の学校に響かないよう、金曜の夜と。土日はいつもよりゆっくり起きれるように、お昼前から。……すべては、レイちゃんの優しさ。
「ゆきちゃん……
レイちゃんと仲直りする気、ない……?」
先に来ていたゆきちゃんと向かい合って「いただきます」と手を合わせたあと。言ってみれば、ぴたっとお箸を持つ手を止めるゆきちゃん。
今日のお昼ご飯は涼しげに素麺。オクラと人参が散らされていて、添えられたお花もピンクと紫のグラデーションが綺麗だ。
「仲直りっていうか……
いや、俺は別に喧嘩したつもりねえよ……?」
「でもレイちゃんのこと避けてるでしょ……?」



