……変わらないな。
お互いの話をして、少なからず"他人"ではなくなった。それでも態度は変わらねえし、距離が縮んだとさえ感じる。
「ほら、動いて。
今日から稽古が被らない限り、わたしも同じ部屋で食事することになったんだから」
「え?まじで~?
よっしゃ、俺先顔洗ってくるわ~」
「ちょ、雪深ずるいんだけど……!」
「おいおい、
おめーら俺のこと置いてくんじゃねーよ」
……こいつらはガキか。
仕方ねえ奴らだな、と3人が占領していた布団を芙夏と片付けていたら、不意に雨麗が「はとり」と俺を呼んだ。
ん?と振り返れば、差し出されたのは昨日の封筒。
それを見て、一瞬声を呑み込んだが。……結局、それに対しては特に深い感情を抱くこともなく、端的に「破棄しててくれていい」と告げた。
「追わなかったのは……あいつのためで。
でも、本気で探せばすぐにでもあいつらを追い詰められた。なのに俺があいつを言い訳にしてそうしなかったのは、結局俺が甘かったからだ」
「はりーちゃん……」
「あいつらは、本当はやってないんじゃないか、って。
そんな可能性の方が低いのに、それでも最後まで……信じたかった俺が悪い」
大事だと思った人間を、この手で殺めるなんて、本当は無謀だったのかもしれない。
もし再会して手を掛けても、結局殺せなかったような気がする。……俺が、一度は本気で大事だと思った、信頼した相手だったから。
「ふふ……本当。
あなたは優しい人ね、はとり」
破棄していいと言ったのに、金庫へ戻される封筒。いつか必要になった時のために、なんて言うけど、必要な時が来ないと知ってるくせに。
……いや、違うのか。
必要な時が来ないと、わかっているから。
だから、あえて、残しておくのか。



