言われた通り一度部屋を出て、洗面所で顔を洗う。
心做しか顔色が良い。いっそ潔く諦めた方が早かったのかもしれないな。あいつが最後に残した手紙の一文は、『幸せになって』だったか。
「はりーちゃん、おはよぉ……」
「……芙夏。
おはよう。随分と眠そうだな」
「ん、ひさびさに夜ふかししちゃって、ねむい……」
「ふ。顔洗って目覚ませな」
それにしても、だ。昨日俺と雨麗は最後まで話をしていて、俺の方が先に寝た。
つまり雨麗は誰よりも遅く就寝して、誰よりも早く起床していることになる。大丈夫なのか、と一抹の心配はあるが、彼女は至っていつも通りだ。
昨日寝たのが、2時半頃。
6時の時点で起きて仕事してんだから、就寝時刻は長くて3時間。……いくらショートスリーパーだったとしても、いつか倒れるだろそれ。
「ほら、雪深、胡粋、柊季。
だらだらしてないで顔洗ってきなさい」
部屋にもどると小豆さんは朝食の支度の関係か、いなくなっていた。
3人を雨麗が起こしているが、目を覚ましているのに起き上がらないせいで苦戦しているらしい。雪深は普段すぐにでも雨麗に引っ付きそうだが、朝は大抵こんな感じだ。
「だる……なんでレイはそんな元気なの」
「あなた達みたいに時間を無駄にしてたら仕事がたまる方が早いのよ。
お願いだから芙夏に悪影響を与えないでちょうだい」
「俺はお嬢がキスしてくれんなら起きる……」
「……はとり。
そこの3人、布団ごとで構わないから部屋から引きずり出してくれないかしら」
「お前変なとこで謙虚なくせに、変なとこで雑だよな……
つーか、はとり!お前なんでしれっと布団引っ張ろうとしてんだよ、起きるっての……!」



