「ごめん、なさい……っ。
あなたに味方するようなことばっかり言ったのに、わたし、結局はあなたに復讐なんかして欲しくない、」
「……雨麗」
「大事だから……
五家の若なんてことも関係なくて、ただただあなたが、はとりのことが大事だから、お願い。……綺麗事ばかりで着飾って、ごめんね、」
はらはらとこぼれ落ちる涙。
懇願するように抱き着かれて、その様子が、いつかのあいつと重なって見えた。雰囲気も姿も、何も似てないのに。……似てない、のに。
「……、泣くなよ」
俺を本気で大事だと思ってくれているその姿は、同じだ。
それが恋情だとしても、忠誠を誓う相手だとしても、関係なく。俺のためだと、言ってくれるところは同じだ。
抱き締め返して頭を撫でてやってもなかなか泣き止まなくて、「……わかったよ」と呟く。
そうすれば、涙を瞳にいっぱい溜めたままの彼女が、俺を見上げた。……普段、そんな幼い顔、見せねえくせに。
「……そうやって、本気で嫌がってくれた方が。
どんなに綺麗な言葉を並べるよりも、響く」
「はとり……」
「その代わり。……さっきも言ったが、俺は復讐するためだけに生きてきたつもりだった。
だから代わりになるような、俺の生きる理由を、見つけてくれるならな」
うん、と彼女が頷く。
それからほっとしたように「よかった」と言う彼女。溜まっていた涙が溢れたのか、ぽたりと落ちたそれを見て、純粋に綺麗だと思った。
「……雨麗」
女に泣かれるのは、苦手だ。
だからあいつには、嬉し涙しか流させねえようにするなんて、んなかっこつけたこと言ってたくせに。結局また別の女泣かせてんな、と苦笑して。
泣かせて悪かった、と。
彼女の耳元で、小さく囁いた。



