「天祥くんたちのためなら自分がどうなったっていいって聞いて、面白くなくなったの。

……襲われて泣き叫んでくれるならそうしたけど」



「あら、だからって代わりにあなたたちが来たところでわたしは泣き叫んだりしないわよ?」



「あんたが泣き叫ぶかどうかじゃないの。

あたしたちが、あんたが傷ついてるところ見て面白がるだけだから」



……とんでもねーな。

女って怖ぇ、と思っていれば、ガタン!と大きな音が鳴る。どうやら彼女が椅子から強引に蹴り落とされたようだが、依然として口調は落ち着いたままだ。



「……殺し屋を使うくらいなら、

はじめからわたしのこと殺しちゃえばいいのに」



「、」



何言ってんだよ、と胡粋と思わず顔を見合わせた。

はとりだけはやっぱり感情の読めない瞳で彼女を見ていて、知ることのない過去に、何度も何度も焦燥感を煽られる。




「死んだら面白くないでしょ。

痛みも何も知らずに、死んでくんだから」



「……あら、そうなの。

てっきり、わたしが死んでもはとりが振り向かないってわかってるから自分の手は染めないのかと思ったけど」



「あ、んたね……」



「わたしのこと傷つけても、

はとりが振り向かないってところまで理解してくれてるなら助かったのに」



「うるさい……!

そんなことあんたに言われなくてもわかってるわよ!そこまでわかってんのに、あんたが目障りだってことわからないわけ!?」



鈍い音が、静かな倉庫内に響く。

しっかり覗き込まねーと殴られてんのか蹴られてんのかもわかんねえけど、それでも、音だけ聞いてたって心地の良いものじゃない。



特に小豆さんなんて、昨日彼女自身を守れなかったという後悔もあるだろうに、じっと見守ることしかできないなんて地獄だろう。

それでも耐えることしか出来なった俺らが動くことになったのは──唐突だった。