──30分前。
彼女はあくまで誘拐、監禁されていたかのように、パイプ椅子に腰掛けた状態で、手足にガムテープをぐるぐる巻いた上からロープで縛られた。
プロの殺し屋だけあって、「さすがにわずかな時間じゃ解けない結び方ね」と彼女は笑ってたけど。目のつけどころがおかしい。
口にもガムテープ貼っておく?とまたまた呑気に笑う彼女に全員がため息を漏らしたのは仕方ない。
そんなこんなで現場は完成、俺ら三人はそう高くない高さだが二階となっている空間に潜むことになった。
というのも一階はがらんとしていて隠れるスペースがほとんどなく、小豆さんとカメラを隠すだけで精一杯だからだ。
雪深と芙夏が車に戻ってから約20分。
女たちが来た合図で雪深から鳴らされる予定だった彼女のスマホが、着信を知らせた。当然誰も出るわけなく、コールが途切れたそれ。
「……あらあら。
随分とみすぼらしい姿ね、御陵さん」
声が聞こえてそろっと下を覗けば、そこにいたのは彼女の見立て通り、三人の女。
リーダー格だと言われていたその女は確か有名企業の社長を親に持つ金持ちの女で、どこに行くんだってほど着飾り、手にはブランドバッグ。
殺し屋たちへの依頼は、「御陵雨麗を誘拐し、わたしたちが来るまで見張っておくこと」。
彼女の誘拐を確認できたことで、男たちには「行っていいわよ」とあっさり許可を出した。
倉庫の一階には彼女と女三人、そして潜んでいる小豆さんだけ。
二階なのにはっきりと声が聞こえてくるほど倉庫の中は静かで、息を呑む。
「生憎……誘拐されたのは初めてじゃないの」
「、」
「わたしが当時と同じ3歳だったら怖がったかもしれないけれど。
……生憎、もう16なのよね」
作り話なのか、それとも本当の話なのか。
見当がつかないのだから、作り話だとしたら相当演技がうまい。たったそれだけしか話していないのに、事実としか思えねーんだから。
「それよりわたしは感動してるのよ。
たかが嫉妬で、ここまで出来るあなたたちのことを。……襲わせる作戦は諦めたの?ここまでプロにさせたら、男に襲わせた方があなたたちも楽しいでしょうに」
明らかな挑発。
話している内容が穏やかじゃないせいで落ち着かないが、彼女は何の抵抗もなく落ち着いたように話を進める。



