傷つけられるのは自分だとわかっていて。

それでも、彼女は相手を世間の目から守ろうとする。そこにあるのは優しさでも何でもなく、当たり前のはずの常識なのに。



それを優しさだと感じるこの世界が。

どれだけ歪に歪んで、混沌と濁っているのか。



「……それに、ネットに晒した場合、わたしの情報が漏れる可能性もある。

ネットには偽の情報をばら撒いてはいるけれど、極道関係者だとバレたら、それこそこっちが不利になりかねない場合もあるから」



「……そうだね。

でもやっぱり素直にそれを見ているわけには、」



「見ていられないなら車で待機してなさい。

最悪、小豆にお願いして助けてもらうから」



「………」



守ることができるのに守らせてもらえない状況がどれだけ苦しいのかなんて、言わなくても全員がわかる。

特に芙夏は見ていられないようで、「ぼくは車で待機してるね」とつぶやいた。




「雪深は迷ってるみたいだけど……

今回来るでしょう女の子たちの中に、あなたを好いている子は恐らくいないわ。リーダーの子がはとり、その取り巻きが胡粋と柊季よ」



「……じゃあ俺が行くのは違うだろうから、俺も芙夏と待ってることにするわ。

お嬢のこと助けに行くってなったら、その時は呼んで。相手が三人なら同数で足りるだろうけど、念のため行くから」



「わかった。……正直誰もレイが傷つくところなんて見たくないだろうけど。

近くにいた方が助けに行きやすいだろうし、俺は目の届くところで待機する」



「俺もそれでいい。……柊季」



「……そっちでいい。

見えねーとこで待機してる方が、気が狂うだろ」



「わかった。

……ぎりぎりまで持ちこたえて、出てきちゃだめよ」



他にだって、作戦は色々あんだろうに。

そうやって自分のことを犠牲にして、誰よりも俺らを優先してくれようとするから。……だから、放っておけなく、なるんだよ。