【完】鵠ノ夜[上]




胡粋が「俺らアイドルじゃないのに」なんて言っているが、本当に迷惑な話だ。

つーかなんだよまじで、ファンクラブって。



「今どきアイドルの過激なファンでも、そのアイドルと熱愛報道の出た女性のことを誘拐なんてしないでしょうね」



「……雨麗様。

でも直接話をされるだけでしたら、一度帰宅されても良かったのでは?」



「何言ってるの、暴行させるのよ」



「……はい?」



「だから、わたしのことを暴行させるの。

そこをカメラで撮影しておいて、あとで証拠を学校に渡す。少なからず停学にはなるでしょうね」



平然と彼女は言うが、本気で言って……んだろうな。たぶん。

間違いなく冗談でんなこと言わねーんだろうな、って理解できる自分が憎い。




「まあ、その方法はさておき……

ネットとかにばら撒いた方が効果あるんじゃない?そういうのって炎上したら学校に苦情の電話が入るし、より効果的だと思うけど」



「もし相手を(かえり)みないならその方法でも構わないけれど。

それこそ、彼女たちを社会的に抹殺するのと同じよ。こちら側が望まなくても、そんなことすればネット上の何千何万何億っていう人間が、勝手に情報を載せ始めるの」



「……プライバシーなんて、

あって、無いようなものだからね」



「そう。

氏名、生年月日、電話番号、住所……ありとあらゆる情報が勝手に書き込まれて、公の場に晒されるのよ」



「……それはレイの、せめてもの優しさ?」



「まさか。本来なら法で守られるべき情報を、世間一般の人間が勝手に晒すなんて間違ってる。

どれだけ相手が悪いことをしても、よ。何のために罪を裁く人達がいると思ってるの」



「……うん。そうだね」