「もちろんです。
……むしろ、所持を促されたのは旦那様ですから」
「……万が一にでも跡継ぎが死んだら困るからでしょう。
帰宅したらお父様のご機嫌とらなくちゃいけないんだから、」
「元はといえば雨麗様が誘拐されたのは原因……では、ありませんね。
お守りできず、申し訳ありませんでした」
「そんなことはいいのよ。
……今回もし、誘拐ではなくはじめからわたしの暗殺が目的だったなら、あなたの首は飛んで、あっけなく御陵は終焉になっていたでしょうけど」
しれっと小豆さんを脅している彼女に、真っ先に駆け寄って抱きついたのは芙夏で。
すっかり元気にはなっていたが、不安が完全に消えていたわけではないんだろう。
「大丈夫よ……芙夏。
わたしはあなたを置いていかないから」
兄貴のことが、まだトラウマなせいだ。
置いていかれるかもしれない事実に怯えてる芙夏のことを心配していた。……だから昨日、強引な取引で話を纏め、連絡をつないだ。
「レイちゃん、」
「……うん」
「ぜったい、置いてっちゃやだよ……」
「大好きな芙夏のことをどうして置いていく必要があるの。
そばにいるって約束するから、そんな顔しないで」
よしよしと頭を撫でられてすこしは元気が出たのか、こくこくと芙夏は頷いてるけど。
こっちにいる男が二人、すげえ不機嫌になってるからどうにかしてくれ。年下の男がトラウマ抱えてるっていうのに、お前ら心狭いな。
「それから、胡粋、雪深、柊季」
名前を呼ばれただけなのに嬉しそうにしてるから、どうしようもねーなこいつら、と漏れるため息。
……つーか、なんで俺も?



