【完】鵠ノ夜[上]




んじゃお先ー、と別邸にもどってすぐに風呂に引っ込む雪深。

……どうでもいいけどあいつ普段風呂長くなかったっけ。別にすげえ長いって訳でもねえけど、俺らの中じゃ確か一番長かったよな。



「……じゃあ。

俺は雪深が風呂から上がってくる前に、先にレイに連絡してこようかな」



「お前も連絡すんのかよ……」



「いいでしょ、別に。

……雪深に負けてらんないっての」



小さく零した胡粋が、部屋に引き上げる。

芙夏も何かあるのか、「ぼくお風呂後でいいよー」と先に部屋に行ったから、リビングに残ってんのは俺とはとりだけ。



「はとり。……お前明日の朝行くの?」



こいつも大抵、何考えてんのかわからない。

ただその瞳の中に揺らぐことのない大きな何かがあるのは確かで。それが少なからず、良い方へ進むものなのかと問われれば、素直には頷けなかった。




「ああ。……どうせ他のヤツらも行くだろ」



「……まーな」



「お前も行くんだろ?」



「……一応来いって呼ばれてっからな」



しばらくして、珈琲淹れるけど飲むか?と席を立つ。

「ああ」と返事を受けて、必然的に片方はブラック。……お嬢程ではねえけど、なんだかんだ、俺らもお互いのことにはそれなりに詳しくなってきた。



「柊季俺の分も~」



「はあ?

……シロップだけは自分で入れろよ」